ミネラル島の大冒険・11 ~硫黄編~
- 2025/1/17
- ビタミン・ミネラル
我々人間に必要不可欠なのに、今や絶滅の危機に瀕しているモノたち——
それがミネラル族である
知られざる彼らの生態を探るべく、我々はミネラル族が暮らす「ミネラル島」に上陸した…
ミネラル島の大冒険・11 ~硫黄編~
【調査10日目】
「本日は登山日和である!」
新品の登山靴を履いた隊員たちが、やけに軽快な足取りで整列を始めた
そう、本日の目的地はミネラル島でも特に標高の高い火山帯エリアだ
この山の頂上付近に住むのが、ちょっとクセのある一族…硫黄族である
しかし、山登りを拒否る隊員たちのために、にゃいす司令官殿が全員分の登山靴を新調して下さったのだ
隊員たちは、ピカピカの登山靴を履き、子供のようにはしゃいでいる
山を登るにつれ、硫黄の匂いが漂ってきた
「うっ…温泉卵の匂いだ…」と鼻を押さえる隊員に私は深呼吸をしてこう告げる
「この香りこそ、命を支えるミネラルの気配だ」と
ほどなくして、岩肌の間から立ちのぼる湯けむりとともに、硫黄族の集落が見えてきた
辺りには温泉施設、薬草蒸し小屋、美肌研究所などが点在しており、どこか健康と美容に特化した雰囲気が漂っている
「ようこそ、硫黄の郷へ!」
出迎えてくれたのは、黄色いマントを羽織った硫黄族の長
聞けば彼らは、タンパク質の構造を整え、酵素の働きを支え、解毒や抗酸化にも関与する、なかなかの実力派らしい
「我々がいなければ、あなた方の髪も肌も、もっとパサパサだったはずですよ」
と、にんまりと得意げな笑みを浮かべる
さらに驚いたことに、硫黄族の一部はグルタチオンやタウリンなどの特殊部隊として、肝臓や脳で重要任務を担っているという
「でも…あまり注目されてませんよね」とつぶやく隊員に、長はこう答えた
「ふふふ、目立たなくても構いません。私たちは“内側から輝かせる”のが仕事ですから」
さすが、美容の陰の立役者
その言葉に、思わず隊員全員が肌や髪を触り始めた
「見えないところにこそ、真の力が宿るのだな…ありがとう、硫黄族よ」
私はそう呟くと、集落を後にしたのだった