ミネラル島の大冒険・11 ~硫黄編~

我々人間に必要不可欠なのに、今や絶滅の危機に瀕しているモノたち——

それがミネラル族である

知られざる彼らの生態を探るべく、我々はミネラル族が暮らす「ミネラル島」に上陸した…

ミネラル島の大冒険・11 ~硫黄編~

【調査10日目】

 

「本日は登山日和である!」

新品の登山靴を履いた隊員たちが、やけに軽快な足取りで整列を始めた

 

そう、本日の目的地はミネラル島でも特に標高の高い火山帯エリアだ

この山の頂上付近に住むのが、ちょっとクセのある一族…硫黄族である

 

しかし、山登りを拒否る隊員たちのために、にゃいす司令官殿が全員分の登山靴を新調して下さったのだ

隊員たちは、ピカピカの登山靴を履き、子供のようにはしゃいでいる

 

山を登るにつれ、硫黄の匂いが漂ってきた

「うっ…温泉卵の匂いだ…」と鼻を押さえる隊員に私は深呼吸をしてこう告げる

「この香りこそ、命を支えるミネラルの気配だ」と

 

ほどなくして、岩肌の間から立ちのぼる湯けむりとともに、硫黄族の集落が見えてきた

辺りには温泉施設、薬草蒸し小屋、美肌研究所などが点在しており、どこか健康と美容に特化した雰囲気が漂っている

 

「ようこそ、硫黄の郷へ!」

 

出迎えてくれたのは、黄色いマントを羽織った硫黄族の長

聞けば彼らは、タンパク質の構造を整え、酵素の働きを支え、解毒や抗酸化にも関与する、なかなかの実力派らしい

 

「我々がいなければ、あなた方の髪も肌も、もっとパサパサだったはずですよ」

と、にんまりと得意げな笑みを浮かべる

 

さらに驚いたことに、硫黄族の一部はグルタチオンやタウリンなどの特殊部隊として、肝臓や脳で重要任務を担っているという

 

「でも…あまり注目されてませんよね」とつぶやく隊員に、長はこう答えた

 

「ふふふ、目立たなくても構いません。私たちは“内側から輝かせる”のが仕事ですから」

 

さすが、美容の陰の立役者

その言葉に、思わず隊員全員が肌や髪を触り始めた

 

「見えないところにこそ、真の力が宿るのだな…ありがとう、硫黄族よ」

私はそう呟くと、集落を後にしたのだった

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