ミネラル島の大冒険・12 ~塩素編~

我々人間に必要不可欠なのに、今や絶滅の危機に瀕しているモノたち——

それがミネラル族である

知られざる彼らの生態を探るべく、我々はミネラル族が暮らす「ミネラル島」に上陸した…

ミネラル島の大冒険・12 ~塩素編~

【調査11日目】

 

今日、我々が向かうのは、ミネラル島の沿岸部エリア

潮風が吹きつける浜辺の向こうに、巨大な貯水タンクと水処理施設のようなものが見える

 

「ここが…塩素族の根城か」

私は麦わら帽子をかぶり直し、赤いベストを直しながら呟いた

べ、別に麦わらの海賊を意識したわけではないからな、コホン

 

塩素族は非常に慎重な一族で、我々の接近にもすぐには姿を見せない

だが、しばらくすると、白衣を着た科学者風のミネラルがこちらへ歩いてきた

 

「…で、何の用?怪しい者には容赦しないわよ」

やや強めの口調、どうやらこの方が塩素族のリーダーらしい

 

塩素族の主な役目は、体液のバランス維持、消化のサポート(胃酸の成分)、ナトリウム族との共同作業で電解質のバランスを整えるなど、多岐にわたる

そのため、拠点も沿岸部に多く、医療施設や研究所のような建物が点在しているのが見えた

 

「私たちがいなきゃ、胃の中も体の水分も、ぐちゃぐちゃになるの。覚えといて」

…実に合理的かつ、容赦ない物言いである

 

しかも、施設内には細菌対策部隊もおり、消毒や殺菌が彼らの専門だという

あの学校のプールの匂いは彼らだったのか、と隊員たちがざわつく

 

ちなみに塩素族はナトリウム族と“しょっぱい同盟”を結んでおり、人間の体内では常に塩(NaCl)として行動しているという

 

帰り道、隊員のひとりが小声でこうつぶやいた

「なんか…塩素族って、陰で支えるプロフェッショナルという感じで、かっこいいすね」

 

私はうなずきつつ、塩素族に背中を向けながら心の中で敬礼した

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