ミネラル島の大冒険・12 ~塩素編~
- 2025/1/18
- ビタミン・ミネラル
我々人間に必要不可欠なのに、今や絶滅の危機に瀕しているモノたち——
それがミネラル族である
知られざる彼らの生態を探るべく、我々はミネラル族が暮らす「ミネラル島」に上陸した…
ミネラル島の大冒険・12 ~塩素編~
【調査11日目】
今日、我々が向かうのは、ミネラル島の沿岸部エリア
潮風が吹きつける浜辺の向こうに、巨大な貯水タンクと水処理施設のようなものが見える
「ここが…塩素族の根城か」
私は麦わら帽子をかぶり直し、赤いベストを直しながら呟いた
べ、別に麦わらの海賊を意識したわけではないからな、コホン
塩素族は非常に慎重な一族で、我々の接近にもすぐには姿を見せない
だが、しばらくすると、白衣を着た科学者風のミネラルがこちらへ歩いてきた
「…で、何の用?怪しい者には容赦しないわよ」
やや強めの口調、どうやらこの方が塩素族のリーダーらしい
塩素族の主な役目は、体液のバランス維持、消化のサポート(胃酸の成分)、ナトリウム族との共同作業で電解質のバランスを整えるなど、多岐にわたる
そのため、拠点も沿岸部に多く、医療施設や研究所のような建物が点在しているのが見えた
「私たちがいなきゃ、胃の中も体の水分も、ぐちゃぐちゃになるの。覚えといて」
…実に合理的かつ、容赦ない物言いである
しかも、施設内には細菌対策部隊もおり、消毒や殺菌が彼らの専門だという
あの学校のプールの匂いは彼らだったのか、と隊員たちがざわつく
ちなみに塩素族はナトリウム族と“しょっぱい同盟”を結んでおり、人間の体内では常に塩(NaCl)として行動しているという
帰り道、隊員のひとりが小声でこうつぶやいた
「なんか…塩素族って、陰で支えるプロフェッショナルという感じで、かっこいいすね」
私はうなずきつつ、塩素族に背中を向けながら心の中で敬礼した