ミネラル島の大冒険・10 ~銅編~
- 2025/1/16
- ビタミン・ミネラル
我々人間に必要不可欠なのに、今や絶滅の危機に瀕しているモノたち——
それがミネラル族である
知られざる彼らの生態を探るべく、我々はミネラル族が暮らす「ミネラル島」に上陸した…
ミネラル島の大冒険・10 ~銅編~
【調査9日目】
調査もついに9日目
我々の体力は尽きかけているが、ミネラル達への敬意と、隊長(私だ!)の厳しい目によって、隊員たちは今日も歩を進めている
「今日はどこへ向かうんですか、隊長?」
と、隊員の一人が聞いてくる
「今日は少数精鋭の天才部隊…銅族の調査だ」
そう言うと、隊員たちは目を丸くした
「銅ですか? そんなに重要なミネラルだったんですか?」
こう問われて「どう(銅)だろう?」と返しそうになったが、出かかった言葉をぐっと飲み込んだ
ふっ…やはりまだまだ隊員たちは、勉強が足りん
“微量ミネラル”の中でも銅は、その小さな体に驚くほどの働きを秘めているのだ
銅族の集落は、山のふもとの森林地帯にひっそりと広がっていた
派手さはないが、どこか職人の集団といった雰囲気が漂っている
一見おとなしく見える彼らだが、その仕事ぶりは実に多彩だ
「私たちは、鉄族のサポート役です」
と、渋い声で語るのは、銅族の技師
演歌を歌わせたら、間違いなくこぶしが回りそうだ
「鉄が酸素を運ぶなら、私たちは鉄を働かせる立場。影のリーダーと言ってもいいかもしれませんね」
なるほど、どうやら銅族は鉄の吸収や利用を助けるという、縁の下の力持ち的存在らしい
さらに銅族は、酵素の活性化、エネルギー産生、抗酸化作用、免疫機能の維持にも関わっているという
しかもその仕事ぶりはまさに職人級で、一切の無駄がない
「銅は少ないけど大事なやつってことですね」
と隊員が感心して言うと、銅族の長老がニヤリと笑ってこう返した
「そう、“量より質”ってやつさ。派手じゃないけど、いなきゃ困る。それが銅族だ」
その言葉に、隊員たちがそっと背筋を伸ばした
自分もそうありたい、とでも思ったのかもしれない
帰り道、私はふと足元に置かれた銅板に気づいた
静かに存在しながら、確かな輝きを放つそれを見て、私は心の中でこう呟いた
「ありがとう、銅族。君たちこそ、本物のプロフェッショナルだ」