ミネラル島の大冒険・10 ~銅編~

我々人間に必要不可欠なのに、今や絶滅の危機に瀕しているモノたち——

それがミネラル族である

知られざる彼らの生態を探るべく、我々はミネラル族が暮らす「ミネラル島」に上陸した…

ミネラル島の大冒険・10 ~銅編~

【調査9日目】

 

調査もついに9日目

我々の体力は尽きかけているが、ミネラル達への敬意と、隊長(私だ!)の厳しい目によって、隊員たちは今日も歩を進めている

 

「今日はどこへ向かうんですか、隊長?」

と、隊員の一人が聞いてくる

 

「今日は少数精鋭の天才部隊…銅族の調査だ」

そう言うと、隊員たちは目を丸くした

 

「銅ですか? そんなに重要なミネラルだったんですか?」

こう問われて「どう(銅)だろう?」と返しそうになったが、出かかった言葉をぐっと飲み込んだ

 

ふっ…やはりまだまだ隊員たちは、勉強が足りん

“微量ミネラル”の中でも銅は、その小さな体に驚くほどの働きを秘めているのだ

 

銅族の集落は、山のふもとの森林地帯にひっそりと広がっていた

派手さはないが、どこか職人の集団といった雰囲気が漂っている

 

一見おとなしく見える彼らだが、その仕事ぶりは実に多彩だ

 

「私たちは、鉄族のサポート役です」

と、渋い声で語るのは、銅族の技師

演歌を歌わせたら、間違いなくこぶしが回りそうだ

 

「鉄が酸素を運ぶなら、私たちは鉄を働かせる立場。影のリーダーと言ってもいいかもしれませんね」

 

なるほど、どうやら銅族は鉄の吸収や利用を助けるという、縁の下の力持ち的存在らしい

 

さらに銅族は、酵素の活性化、エネルギー産生、抗酸化作用、免疫機能の維持にも関わっているという

しかもその仕事ぶりはまさに職人級で、一切の無駄がない

 

「銅は少ないけど大事なやつってことですね」

と隊員が感心して言うと、銅族の長老がニヤリと笑ってこう返した

 

「そう、“量より質”ってやつさ。派手じゃないけど、いなきゃ困る。それが銅族だ」

 

その言葉に、隊員たちがそっと背筋を伸ばした

自分もそうありたい、とでも思ったのかもしれない

 

帰り道、私はふと足元に置かれた銅板に気づいた

静かに存在しながら、確かな輝きを放つそれを見て、私は心の中でこう呟いた

 

「ありがとう、銅族。君たちこそ、本物のプロフェッショナルだ」

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