ミネラル島の大冒険・13 ~ヨウ素編~

我々人間に必要不可欠なのに、今や絶滅の危機に瀕しているモノたち——

それがミネラル族である

知られざる彼らの生態を探るべく、我々はミネラル族が暮らす「ミネラル島」に上陸した…

ミネラル島の大冒険・13 ~ヨウ素編~

【調査12日目】

 

ミネラル島の北東部。そこは一面、海に囲まれた静かな入り江だった

漁船が行き交い、昆布やワカメがゆらゆらと揺れている

海藻が主食…いや、主成分の一族が住んでいる場所だ

 

ここを訪れた目的はただ一つ

ヨウ素族とのコンタクトである

 

すると、物陰から一人のミネラルが現れた

「…ようこそ、遠路はるばる。あなた方が“ヒト代表”ですか?」

 

どこか透き通るような声で語りかけてくるその人物こそ、ヨウ素族の長だった

細身で優雅、だが瞳には確かな自信が宿っている

 

「我々の仕事は、“命の設計図を動かす”こと。つまり、甲状腺ホルモンの原料なのです」

 

そう、ヨウ素族は甲状腺ホルモンを作るために必要不可欠な存在

そのホルモンが体温を保ち、心臓を動かし、食べたものからエネルギーを作り、子どもの脳や体の成長を助けているのだ

 

「一見、何もしていないように見えますが、我々がいなければ、体のエンジンは始動しないのですよ」とヨウ素の長は静かに語る

身体の発育、基礎代謝、体温、脳の成長…すべて彼らの活動が支えているのだ

 

「もし我々が不足すれば、体も心も動きが鈍くなってしまうでしょう。特に、幼少期には致命的です」

 

我々が感心していると、長は少し誇らしげな顔を見せた

 

ちなみにヨウ素族は、仲間の数が少なく、ヒトの体内に長く留まるタイプではない

だがその分、存在感は極めて大きく、“寡黙なる知将”といったところだ

 

帰り際、我々を見送ってくれていた長が呟いた

「どうかお忘れなきよう。私たちは、目立たなくとも…常にあなた方を支えているのです」

 

我々はその言葉を胸に刻み、静かにその地を後にした

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