ミネラル島の大冒険・15 ~モリブデン編~

我々人間に必要不可欠なのに、今や絶滅の危機に瀕しているモノたち——

それがミネラル族である

知られざる彼らの生態を探るべく、我々はミネラル族が暮らす「ミネラル島」に上陸した…

ミネラル島の大冒険・15 ~モリブデン編~

【調査14日目】

 

今日の調査は、島の西部・山岳地帯に広がる段々畑の集落に向かう

そこにいるのは、モリブデン族

かつて「地味すぎる」と言われ、ミネラルたちの宴でもしばしば空気扱いされがちだったが…実は、身体の中では重要な任務を背負っていたのだ

 

我々がたどり着いたのは、「酵素研究所」と記された控えめな建物

中では、理知的な表情のモリブデン族たちが、せっせと働いていた

 

案内役のモリ主任は眼鏡をくいっと上げながら語る

「我々の仕事は、不要な物質を分解・無毒化すること。ヒトの体にたまる“いらないもの”を処理する分解係です」

 

特に彼らは、プリン体の代謝(過剰になると痛風の原因)や硫黄やアルデヒドの代謝(解毒反応)などに関与し、肝臓と協力してヒトの体内をクリーンに保っているという

 

何とありがたいミネラルたちなのだ!

痛風一歩手前の私は、心の底から感謝した

 

そして主任は、やおら段々畑を指さした

 

「このあたりの食材に我々は多く住んでいます。たとえば…」

 

・ 大豆やレンズ豆などの豆類

・ 玄米や雑穀類、全粒粉パン

・ レバーや腎臓などの臓肉

とくに豆類とは非常に親密な関係にあり、“豆の谷”ではモリブデン族が豊作を祝い、祭りを行うという

 

「少量でもいいんです。ほんのちょっとで充分に働きます」

と、主任は笑った

 

その言葉通り、ヒトに必要なモリブデンの量はごくわずか

だが、彼らがいないと代謝の歯車が狂ってしまうのだ

 

帰り際、隊員のひとりがこっそり言った

「…主任、いい人だったな。顔は地味だけど」

 

そんな地味顔主任に、私は敬意を込めて敬礼を送った

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