ミネラル島の大冒険・9  ~ナトリウム編~

我々人間に必要不可欠なのに、今や絶滅の危機に瀕しているモノたち——

それがミネラル族である

知られざる彼らの生態を探るべく、我々はミネラル族が暮らす「ミネラル島」に上陸した…

 

ミネラル島の大冒険・9 ~ナトリウム編~

【調査8日目】

 

調査もついに8日目

今朝は、なんだか隊員たちの様子が違う

 

「おはようございます、隊長!本日は調査日和ですね!」

「お弁当も自作しました!減塩で!」

 

何だ、その爽やかな挨拶は

昨日までは「暑いですね…早く帰りたいです…」と、だらけきっていたくせに

 

隊員の一人をテントの裏に呼び出し、やさしーく問いただしてみた

すると、どうやら昨晩、にゃいす司令官様から“謎のスープ”の差し入れがあったらしい

 

「なんか…飲んだ瞬間、シャキッとしました!」

「身体に電気が通ったような…あれ、たぶんナトリウム族の仕業です!」

 

なるほど

そういえば、最近やけに汗をかくが、汗と一緒に出て行ったのは水分だけではなかったのだ

ナトリウム族の離脱による“脱塩シンドローム”が原因だったに違いない

 

ということで、我々はナトリウム族の拠点があるという海沿いのエリアへ向かうことになった

ほどなく現れたのは、波音の響く美しい浜辺

その中央に建つ、白と水色の巨大な建物には、こう書かれていた

 

“ナトリウム庁”

 

おお、ついに現れたか――ナトリウム族!

 

中に入ると、ナトリウム族のメンバーたちがせっせと情報をやりとりし、管やポンプを調整している

 

彼らの仕事は、とにかく多い

体内の水分バランスを管理し、血圧の調整や、神経伝達をスムーズにするという

いわば、人体の“指令と流れ”を司る総合管理職である

 

「私たちは“動きのキッカケ”を生み出すのが仕事です」

とナトリウム族のリーダーが説明してくれた

「神経が“動け!”と命令を出しても、私たちがいなければ、筋肉はウンともスンとも動きませんからね」

 

ナトリウムが不足すると、だるさ、食欲不振、ひどい場合は意識障害にまでつながるという

 

そしてナトリウム族の“相棒”は、あのカリウム族

彼らはいつも「体内に出入りする門番」のような役割を分担している

 

「私たちは、表と裏から細胞を守っているんですよ」

と、ナトリウム族の青年が誇らしげに笑う

 

ただし、ひとつ注意すべきは、彼らは非常に人気者ゆえに“過剰招集”されやすいこと

とくに人間界では、加工食品やスナック菓子を通じてナトリウム族が大量に送り込まれ、

結果として「血圧上昇」や「むくみ」という混乱を招くことがあるという

 

「適量を守って呼んでくださいね。私たちも働きすぎると倒れますから」

彼らはやや苦笑いを浮かべていた

 

ナトリウム族——

我々の体を“動かし”、リズムを“整える”存在

彼らの存在なしには、ヒトは一歩も踏み出すことができないのだ

 

私は改めて深く頭を下げた

そして次なるミネラルの手がかりを求めて、我々は浜辺を後にしたのだった…

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